2017年08月 / 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月
--.--.--(--)

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
EDIT  |  --:-- |  スポンサー広告  | Top↑
2007.01.04(Thu)

1年目を振り返って 

FFCC小説もやっとのことで1年目を終えることが出来ました。
途中更新停滞とかありましたけど(黙

思えばこのブログを始めた切っ掛けもFFCCというゲームがあったからでした。
やればやるほどに自分の中で世界が膨らんでいって「どうせなら公開でもしてみよう」と思ったのが最初でしたね。
まあ、そう思ったは良いのですけど、実際書いてみると結構難しいもので途中何度も詰まったりしました。
色々気分転換をして書き直したりして今あるわけなのですが。
そして昔書いたやつを読んでみるととてつもなく恥ずかしくなります(黙

自分でも良く続いたなと思ったりします。

さて、本題の1年目を振り返ってですが、1年目の大きなテーマはまず新しくキャラバンのリーダーになったアルと新しくキャラバンに入ったライの成長でした。
アレ、ティティは?見たいなツッコミは無しの方向で(黙
最終的にはアルはキャラバンのリーダーとしての自覚を再認識し、ライはキャラバンとして一つ戦いを超えたことにより成長したでしょう。
最終話で強引にまとめた気がしないでもないですが(黙

1年目でも色々なところにネタを仕掛けました。
アルの過去についてや「姫」の話などです。
アルの過去については多分番外編でやるつもりです。
予定では4~5話で完結する…筈(ぇ
一応番外編の1話目は書き終わってます。
ただ、2話目で詰まりそうな気がします(黙
スポンサーサイト
EDIT  |  16:45 |  1年目・緑の街道  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.01.04(Thu)

1年目 最終話「命の水」 

―絶望

ライの頭の中にはその言葉しかなかった。
クリスタルキャラバンの全滅は同時に村の滅びも意味する。
それだけ、彼らの背負っているものは大きい。
だが、今自分の目の前に居るのは巨大過ぎる街道の恐怖。
二人は全てを覚悟したつもりだった。
これから自分がどうなっても、とジャイアントクラブに挑んだ。
全力で戦った。村を護るため。
しかし、その力の差は残酷だった。
策を打ち砕かれた二人にはどうする事も出来ない。

ライの脳裏に浮かび上がる村の思い出。
何も面白いものが無い平和な村。村人全員が家族みたいな村。
仕入れた商品の計算をいつも間違えてばかりの父さん。
いつも店の軒先で客と楽しそうに話す母さん。
俺がキャラバンになるって決まったとき嫌になる位キャラバンの話を聞かせてくれた姉ちゃん。
旅立ちの日の朝、何度も何度も俺に話しかけてきた弟のガル・ト。
そして話が長くて苦手だった村長の言っていた事の本当の意味も今なら分かる。
「何があっても村に帰って来い。」
今更もう遅いけどな。
俺達、もう帰って来れないし。
村は…。

「なあティティ。俺達が村に帰って来れなかったらどうなるんだ?」

ライが自分でも解りきっていることを聞いてみる。
それは、もしかしたら、自分達が帰って来れなくても村は大丈夫なんじゃないかという淡い期待を込めて聞いたことだった。
だが、ティティは冷酷に現実の答えを返す。

「ライ、私達が何のためのクリスタルキャラバンなのかを考えて。」

それを聞いたライは静かに口を閉じる。
自分達の背負っているものは大き過ぎる。
今はただ、謝ることしか出来ない。村と村人に。

ジャイアントクラブが再び鋏を振り上げる。
全てを諦めた二人に死を与えるため。
凶悪な影が辺りを覆う。
ライは眼を瞑る。

「ゴメンな、遅れちまった。」

不意に声が聞こえる。
始めは幻聴かと思った。
だが一瞬、自分の前を風が通り抜けたかと思うと、閃光が走った。
その光の色は赤く、辺り一面を灰にした。
ライは、恐る恐る眼を開けてみる。
そこには二つ驚くものがあった。
一つは鋏が使い物にならない位に焼かれたジャイアントクラブの姿。
もう一つは懐かしい人の姿。
その服は血の痕に塗れ、体も傷だらけだが、それは紛れも無くアルだった。
ライは思わず呟く。

「お前、今までどこ行ってたんだよ…。」

「ああ、傷が酷かったもんで少し魔法で回復し…」

「何で何も言わないで行くんだよ!!
滅茶苦茶心配したんだぞ…。俺もティティも。
二人で戦って、それでも敵わなくて、お前が助けてくれたときは…そりゃ夢かと思ったけど、だけど…だけどさ…。
俺を…俺達を不安にさせないでくれよ。」

ライが溜まっていた事を一気にアルに言う。
その眼には僅かだが、涙が浮かんでいた。
それを見てアルは思う。
俺達が背背負っているものは村の未来。
そして俺が背負っているものはキャラバンの命。
自分がこいつらを護らなければいけないんだ。
例え周りから見てどれだけ立派になっても、こいつらは俺のキャラバンの一員だ。

「ティティ、ライ…。ゴメンな、余計な心配かけて。」

アルは二人の方を見て改めて謝る。
俺がキャラバンのリーダーを勤める限りティパの村で誰一人として死なせないという覚悟を決めて。
そしてこれからも戦う。ただ、生きるためではなく護るために。

「俺達はここで足踏みしてる訳にはいかねぇんだ。
この道、通してもらうぜ。」



三人はゆっくりと歩いている。
いや、正確にはゆっくりとしか歩けないのだが。

「あのさ、お前ら、もう少し怪我人を労わってくれる?」

二人の遥か後方を歩くアルが弱々しく主張する。
その足取りはふらついて見える。

「さっきはあんなに動けてたのにか?」

「アレ魔法で一時的に回復してただけだから続かないんだよ。」

こんなに必死になって戦った俺に対する扱いがこれだというのが何とも理不尽だ。
せめてこう、肩ぐらい貸してくれないものか…。
まあ、何の伝えないで勝手に動いた俺が悪いんだけどさ。

「アル、負ぶってあげようか?」

いつの間に自分の目の前に来ていたのか、そこにはティティが居た。
さっきまでの事を全く感じさせないいつも通りの笑顔を見せて。

「バカ、それは止せ。」

アルは素早く断る。

「なら肩。ほら立って。」

ティティは強引にアルの腕を引っ張り、肩に乗せる。
アルの顔のすぐ横にはティティの顔がある。
幼馴染でキャラバンでもいつも一緒にいて特に何とも思ったことは無かったが、こうしてみると結構恥ずかしい。

「おい、止めろって。
…その、何だ、恥ずかしい…。

「え、何?聞こえないよ。」

ティティは本当に聞こえなかったのか、それとも聞こえなかった振りをしたのかは判らないが、怪我をしているアルを気遣って歩調を合わせる。
時々、ティティの髪が風に揺れてアルの顔に触れる。
何も話していなくてもティティと居る時間は楽しかった。
このミルラの木まで続く道がもう少し長く続けば、と思ってしまう程に。

「なーミルラの木ってアレか!?」

突然ライが大きな声で叫ぶ。
その指差す先には透き通った緑色をした、木と言うよりは何かの彫刻のようなものがあった。
その葉は大きく弧を描き、何かを包むようにしてある。
これがミルラの木。
人々の思い出の跡に生え、ミルラの雫、命の水を生み出してくれる命の木。
辺りは他のところと違い瘴気が薄く、空気が軽い。

「ああ。待ってろ。今そこに行くから。」

そう言ってアルはゆっくりだった歩調を少しだけ速める。
それに合わせてティティの歩調も速くなる。
追いついた二人と一緒に歩くライ。

「さ、ミルラの雫貰って帰るとしますか。」

アルはミルラの木の前にクリスタルケージを置き、徐に腰を下ろす。
そして儀式の言葉を唱え始める。
村の長老の話によれば、これは雫を生み出す「姫」を呼び覚ます言葉らしいのだが、それも定かではない。
だが、自分達の目の前にある木はその言葉に反応し、辺りの空気を震わす。鳴いているような音を出す。
そしてミルラの木の葉の先に光が集まる。光が雫に変わる。
アルが儀式の言葉を言い終えたと同時に雫はクリスタルケージに落ちた。
ライは毎年キャラバンが持ち帰ってくるケージ満杯に溜まった雫しか見たことが無い。
今、自分の目の前にあるのはケージの半分にも満たない程のミルラの雫。
しかし、ライはこの雫に今まで自分が見た雫以上の感動を覚えた。

「アル、ティティ、次の雫集めに行こうぜ。」

「だからお前はもう少し怪我人を労われ。」

三人の旅はこれからも続く。
世界が瘴気に覆われる限りに。
人が世界で生き抜く限りに。
EDIT  |  15:25 |  1年目・緑の街道  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2006.12.28(Thu)

1年目 9話「リーダーアル の存在」 

腕に致命傷を負ったジャイアントクラブはゆっくりとアルの方向に向きを変える。
体が傷ついてもその眼はまだ光を失っていない。
と、ジャイアントクラブが傷ついた左の爪に自分の足を乗せた。
ミシッ、と気色悪い音がしたかと思うと、次の瞬間ジャイアントクラブは力任せに自分で自分の腕を引き千切った。
腕がだらしなくぶら下っているままでは戦うことが出来ない。
存分に戦うためには自分で自分の腕を捨てる。それが主と呼ばれる魔物の覚悟だ。

「こいつ正気じゃ無ぇな…。」

アルが思わずそう呟く。
目の前で起きた異常な行動に歴戦のキャラバンですら驚きを隠せないは無理も無い。
存分に動けるようになったジャイアントクラブの眼が再び二人を捕らえ、今度は巨大な右の鋏を振り上げる。

(マズイ!!)

アルは本能的にそう直感してライを突き飛ばす。
その直後大地を割るような低い音がしたかと思うと辺りを衝撃が吹き飛ばす。
大地を抉り、クレーターのような跡を残すその巨大な一撃。
左の爪ほどのスピードは無くてもそれを補って尚も余り有るその巨大な力をぶつけられれば鍛えたキャラバンであっても致命傷を負いかねない。

ジャイアントクラブが巨大な一撃を放ち周囲は砂煙に包まれている。
次第に砂煙が晴れてくる。
だが、そこにアルの姿は無かった。

「…嘘だろ、あいつどこ行ったんだよ…。」

「そんな…アル…。」

二人の顔が青ざめる。
ジャイアントクラブの周りから砂煙が完全に晴れたが、やっぱりそこにアルの姿は無く、ジャイアントクラブが鋏を叩きつけた跡だけが空しく残る。
ジャイアントクラブはさっきまではヒトがいた場所を悠々と巨大な眼で確認し、今度はライとティティの方向に体の向きを変える。

「ライ、構えて。
次の攻撃の後の隙を狙って反撃しましょう。」

アルがいなくなった悲しみの中突然ティティが切り出す。
当然そんな情の無いティティの発言に対してライは激昂する。

「お前には感情ってのが無いのかよ!!

仲間が…死んでんだぞ…。」

しばらくの空白。
そしてティティの頬を一筋の涙が伝う。

「…あるわよ。
…私だって悲しいよ。仲間が死んで…平気なわけないじゃない。」

言い終わった瞬間にティティの眼から堪えていた涙が一気に零れ落ちる。

そんなティティを見てライは何も言えなくなった。
悲しいのは自分だけじゃない。
こいつも分かってるんだ。悲しいんだ。俺以上に。
あいつと居た時間が俺よりも長いから。

「だけど…思うの。こんな時…アルなら何て言うのかって。」

ティティが悲しみを堪えてやっと聞き取れる位の声で言う。
そして涙を拭いて精一杯の笑顔を見せる。

「でもね、きっとアルなら「あいつの分まで戦え。村護んのは俺達だ。」って言うと思うの。
だから…戦わなきゃ。負けられない理由があるから。」

悲しいこと、辛いことも自分の本当の感情も押し殺して護るために戦う。
今までアルが自分の前でやっていたこと。教えてくれた。導いてくれた。
今度は私達の番。戦う覚悟は出来た。

「行くよ、ライ。アルの分まで戦わなきゃ。」

そう言ってライの前に立つ。
何処と無く、その姿が大きく見える。
ああ、やっぱり先輩だ。キャラバンとしても。
ライはそう思う。
そしてこの時の光景を絶対に忘れないだろうと思った。

「分かった。ついていくよ。」

ライがティティの横に並んで立つ。
その時、ティティが初めて本当に笑ったような気がした。

「どうかしたか?」

「ううん、何でもない。
それより私がジャイアントクラブの鋏を引き付けるから、その間にライはあの鋏を叩いてきて。」

ライが軽く頷き、それを合図に二人がジャイアントクラブの方へ駆け出す。
ジャイアントクラブは僅かにでも自分に近かったティティに鋏を振り下ろすタイミングを合わせる。
ここまでは作戦通り。
後はティティが上手く避け、ライが鋏を叩いてくれればいい。
と、その時ティティの頭上にあの巨大な鋏が落ちてくる。
ティティは前方を盾で守りながら後ろに飛び跳ねる。
ジャイアントクラブの鋏は空を切り、地面へ激突するが、その衝撃。
周りの全てを吹き飛ばし、近づくことすら難しい。
その攻撃をの隙を狙うのは至難の業だ。
だが、こちらにも負けられないという意地がある。

「ライ、今叩いて。」

「分かってらぁ。」

ライが渾身の力を込めたラケットで鋏の付け根を打ちつける。
自分も吹き飛ぶ程の反動が来る。
腕の感覚も麻痺し、しばらくはラケットを握ることすら出来ない。
頼む、効いてくれ。
だが、無情にもジャイアントクラブの鋏は何事も無かったように無傷だった。

俺達じゃこいつを倒せない。どうすりゃいいんだよ、アル。
教えてくれよ…。
EDIT  |  03:32 |  1年目・緑の街道  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2006.12.26(Tue)

1年目 8話「蟹」 

上流へ近付くにつれて川幅も狭くなり、ごうごうとすさまじい音を立てて流れる滝も見えてきた。
その先に薄っすらと緑色に見える光る場所が三人が目指す場所である。
さっきまではそこら辺に嫌になる位沢山いた魔物もミルラの木の場所を確認出来る位まで近付いた今ではもう殆ど姿を見せなくなっている。
いや、すぐ近くに居ても、もう襲って来ない。
来るからだ。この街道の主と呼ばれる者が。
同じ魔物ですらその存在に畏怖の念を抱いている。

三人は大きな滝が流れる湖の前を歩いていた。
誰も何も言わない。言える状況ではないからだ。
と、アルが静かに歩みを止めて小声で指示を出す。

「ハイストップ。ここで待ってろ。
俺が少し見てくる。」

そう言っていきなり飛び出そうとするアルを慌ててティティが止める。

「待って。一人で行くのは…。」

「心配するな。見てくるだけだ。
お前はここでライと一緒に待っててくれ。」

そう言うとポンッ、とティティの肩に手を乗せ笑ってみせた。
もっとも、帽子を深く被っていてその表情を詳しく見ることは出来ないのだが。
アルはラケットをもう一度強く握り締めてから、足音を立てないようにゆっくりと滝の方へと歩き出した。そして滝の前で止まり、その奥を覗いて見る。
ライ達が居る所から距離にして大体10m程。
だが、それはライにとっては何よりも遠く感じた。

滝の奥には洞窟がある。
暗くて人の目で中を見ることは出来ないが、その中には確実に「何か」が居ると言うことは素人のライでも分かる。
「何か」が息を吸うたびに滝の周りは揺れ、風を吸い込む。
「何か」が息を吐くだびに得体の知れない気がこちらへ流れ込む。

アルは数年前にも同じ種類の魔物と戦ったことがある。
その強さや習性を知っている分こちらの方が有利と踏んだが、そう上手くはいってくれないようだ。
数年前よりもその体は大きく、満ちている気はより凶悪なものになっていた。

(思ったよりも大きいな…。一度引いてから作戦を考えたほうが…。)

ゴオォッ!!

アルが引き返そうとした直後辺りを切り裂く轟音が鳴り響いた。
それと同時にアルの周りを黒い影が包む。
アルはそれに気付き、咄嗟に後ろに飛び跳ねる。
瞬間、アルがいた場所に巨大な蟹が着地した。

―ジャイアントクラブ。
瘴気の影響でその大きさと性格が凶悪に変化した沢蟹の一種だと言われているが、その姿は元のそれとは全くかけ離れている。
その大きさは小さな丘ほどあり、左の爪は鎧を貫くように鋭く、巨大な右の鋏にこれまでに仕留めてきたキャラバンの武器をコレクションをしているかのように刺し、その歴戦の強さを物語っている。
加えてその甲羅の硬さ、魔法も使いこなす知能を持ち合わせ、これほど街道の主の名が相応しい魔物も他にはいない。

ジャイアントクラブはその目の前にいるヒトを睨み付け、自分との力の差を見せ付けようとしている。
だが、アルは突然出てきた主の出現にも冷静だった。
これまで何度も死をすぐ後ろに感じるような戦いを生き延び、今ここにいる。
今更これ位の事で驚きはしない。
だが、自分のすぐ後ろにいる新人キャラバンに同じことは言えなかった。
ちっぽけな自分の目の前に巨大な街道の恐怖そのものが居るのだ。
身動き一つとることが出来ない。震える。涙が出る。
ゴブリンなんかとは全く別物の恐怖。
ゴメン父ちゃん、母ちゃん、リュ・オ姉ちゃんとガル・ト。俺、死んだわ…。

「ボサッと突っ立てんなぁっ!!!」

突然アルに呼ばれて気が付くと目の前にはジャイアントクラブの鋭い爪が迫っていた。
アルが伸ばした手が何とかライを掴み、引き寄せる。
間一髪でかわす事が出来たが、ジャイアントクラブはまだ自分達のすぐそこにいる。
ジャイアントクラブがまたゆっくりと爪を振り上げる。
その目は確実に二人を捉えている。

(来る…。)

「チッ、跳ぶぞ。」

そう言ってアルはライを引っ張って飛び跳ねる。
ライの頭上をジャイアントクラブの爪が掠める。
ジャイアントクラブの爪は空を切り地面に突き刺さった。
それを反撃の好機と見たアルはジャイアントクラブの爪の付け根をラケットで思い切り殴りつけた。
鈍い音が響いたと同時に殴ったところから大量の青い体液が飛び散る。
殴られた爪は力なくブラン、とかろうじて体とつながっている。

両者とも動かない。
ただ、目を合わせている。
これから起こることを予期して恐怖しているのか、それとも最後の精神統一でもしているのか。

今年のキャラバンの、初めてのキャラバンとしての戦いが今始まった。
EDIT  |  22:04 |  1年目・緑の街道  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2006.12.25(Mon)

1年目 7話「休憩」 

夜が明け、朝日が昇り始めた。
空は朝焼けの色で赤みを帯び、ベル川に流れる水も空と同じ色に染まっている。
ベル川の流れはいつもと変わらないリズムで清らかな水の音を響かせていた。

その川のすぐ側をティパの村のキャラバンの三人は歩いていた。
自分達の足音を川の水の音で消し、ゴブリン達の動きが鈍くなる朝の時間を狙って一気にミルラの木まで行くためである。

「なー、そんなのに急がないでさ、もっとゆっく…。」

「静かに。魔物に気付かれるわ。」

ティティの声がライの声を遮りキッ、とライの方を睨みつける。
一瞬怯むが、賢くないライでも流石に今の自分の立場くらいは理解しているようで、何も言わないで黙って先輩二人の後をついていく。

街道は静かだ。
昨日キャラバンを襲ったゴブリン達も今日はまだ出て来ない。
出来れば静かなうちに川の上流のミルラの木まで移動したい。
キャラバン全員がそれを願う。



もうあれから随分と歩いた。
ずっと歩いていたので気付かなかったが、まだ昇りきってなかった日も完全に昇り、辺りは明るくなってきた。
アルは二人の方を振り返ってみる。
息を切らせているティティと、やせ我慢して疲れてないと何度も言い張るライ。
そろそろ休憩したほうがいいな…。
そう思うと無言で水が入った小さい樽を二人に渡す。
そして徐にその場に座り込む。

「疲れただろ?そろそろ休憩しようか。」

「おい、俺達は急いでるんじゃないのか?
こんな所で油売っててもいいのかよ。」

アルは樽に入っている水を飲みながら、横目でライのほうを見る。
全身汗だくで息も上がっている。
疲れているのは見ただけで分かる。
何でこう、こいつは学習しないかな…。

「休め。街道の奥にいる魔物は今のまま行ったら殺されちまうぞ。」

若干呆れたような声で言う。
だが、その言葉にはライを黙らせる威力があった。

―街道の奥にいる魔物

ミルラの木が生える場所には必ず魔物が存在する。
それもミルラの木に近づくにつれて多く、強くなる。
ミルラの木の集まる魔物で一番強い力を持つ魔物が一般にキャラバンからミルラの木の主だとか呼ばれるのだが、これが途方も無く巨大で、普通の魔物の何倍も強い。
更に性質が悪いのは、そのミルラの木の前から動こうとしないのだ。
それもミルラの木に来るキャラバンたちを迎え撃つようにして大きく陣取っている。
なのでキャラバンは普通この主と呼ばれる魔物を倒してミルラの雫を得るのだが、何しろ相手は普通の魔物の何倍も強いのでキャラバンの全滅と言う最悪の事態を招きかねない。
実際に100年ほど前にもキャラバンの全滅で村が一つ滅んだと言うことがあったそうだ。
それがアルが一番恐れていることであり、ライを止めた理由でもある。

「なあ、その街道の奥にいる魔物ってどんなやつ?」

そう言うライの顔は明らかに引きつっている。
恐怖を隠しきれていない。

「お前さ…、ダ・ルクおじさんとかリュ・オに聞かなかったの?」

「いや、聞こうとはしてたんだけど…。」

「つまり聞かなかったんだな…。ま、いいよ。今回は。
で、ここの主はな、デッカイ蟹だ。」

詳しい情報を求めていたライに対して返ってきたのはあまりにも漠然とした答えだった。
デッカイ蟹…?
それのどこが強いんだ?
そんなものでキャラバンが一つ潰れる理由も分からない。
ライの頭に次々と疑問が膨れ上がる。
と、下を向いてひたすら考えるライの肩に手が乗った。

「よし、そろそろ行こう。十分休憩も出来たよな。
ん?あー主の事か。気にするな。アレはそこまでの事でも無ぇよ。
よし、ティティもいいか?。」

「ええ、いつでも行けるわ。」

三人はさらに上流を目指して歩き始めた。
EDIT  |  02:39 |  1年目・緑の街道  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
 | BLOGTOP |  NEXT
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。