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2007.03.06(Tue)

2年目 2話「魔法の国」 

「すっげぇ……。」

ライとノールはそう言ったきり、前を向いて固まる。

自分達の立っている湖の、その上にあるのは湖上に佇むユークの里、シェラ。
湖と陸で区切られたその空間は別の世界のように思える。
湖からは石の柱が何本も建ち、何かの植物のように枝を伸ばす。
そしてその上に人が歩く。家もある。
下の湖の水はその石の柱を縫うように流れ、集まり、小さな滝のようになり、ヴェオ・ル水門へと向かう。
そして極めつけは村の中心に在る淡いグリーンに光るクリスタル。
普段自分たちの見慣れているそれと物は同じだが、全く別の物のように感じる。
ここもまた、瘴気に包まれた世界で人が暮らす町。
だが、自分達が今まで見た事も無いその姿はまさしく、御伽噺(おとぎばなし)の「魔法の国」と言ったところか。
まだ里に入ってもいないのに、圧倒されるばかりだ。

「ほほっ、エディアールよどうした。
また飯でも集りに来たか?」

不意に前方から冗談混じりに言ったような声が聞こえる。
見れば、そこには二人のユークが立っていた。
一人は風格漂う老ユークともう一人、老ユークにべったりくっ付いているそれから見てその孫であろうか。
その二人にアルは近づく。

「ジェラームさん、バカな事言わんで下さい。
村長の遣いです。」

アルは老ユークの冗談をサラリと無視し、ポケットから綺麗に折り畳まれた皺くちゃの手紙を取り出した。
そして手紙をジェラームという老ユークに手渡す。
ジェラームは受け取った手紙をしげしげと、不思議そうに眺める。
表を見たり、裏を見たり。隅から隅まで。
やがて、手紙の観察が終わるとジェラームはようやく手紙を読み始める。

「お主が手紙を粗末に扱うなど、珍しい事もあるのぉ?」

手紙を読みながら、ジェラームはそんな事を呟いた。
一瞬アルがライの方を見てみると、一応彼にも罪悪感は在るようだ。
ライは目を逸らす。
その様子を見て後ろから小さな笑い声が聞こえる。

「うるせぇな…。」

頭をかきながら、ライ。
まだそんな反応をする所が子供、というのか。
アルは小さな溜息を吐くとジェラームに再び話しかける。

「じゃジャラームさん、そろそろ里に入れてもらっても良いですか?
こいつらも待ちくたびれてるんで。」

アルのその発言に、魔法に無縁の新人は首を傾げる。
見れば、ここは湖の畔。橋も、舟も何も無い。
つまり今居る所と里をつなぐものは何も無いのだ。

「アルよぉ、里に入るつっても、どっからだよ?
まさか泳いでか?冗談じゃないぜ。」
「じいちゃん、すげーんだぜ。」

ふと、下から声が聞こえる。
視線を落としてみると、そこにはジェラームの孫が居た。

「どう凄いんだ?」
「まあ、見てなって。」

孫はそう言うとジェラームの方を見つめる。
つられてライもジェラームの方を見る。

それを確認したかのようなタイミングでジェラームは、魔法を唱え始めた。
聞いた事の無い、その魔法。
自分達の使える魔法とは違う、その魔法。
いや、知っていても決して使う事は出来ないであろう。
やがて、ジェラームが魔法を唱え終わると彼に光が集まる。
光はジェラームの腕に手に指に集まり、ジェラームはそれを高々と掲げる。

チラリと、横目でこちらを見る。
新人のキャラバンを見つめ、優しく語り掛ける。

「さあ、渡りなされ。」

そう言ってジェラームが湖の方を指差すと光が岩へと変わり、岩は形を成し橋になる。
光り輝くその橋は旅人を、ティパの村のキャラバンをシェラの里へと誘う道。

「じいちゃん、すんげーだろ?」

見たことも無い魔法を見て、腰を抜かしたライの横でジェラームの孫が誇らしくそう言った。
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2007.02.07(Wed)

2年目 1話「新しいキャラバン」 

※という訳で今回からFFCC小説も2年目に突入です。
え?リバーベル街道の後何してたかって?聞こえないなぁ(死ね
イメージ的にリバーベル街道の約一年後ぐらいの話と思っていただければ。

「なー、アルまだかよ?その、シュラの里?だっけ?
寒くて寒くて堪んねぇよ。」

「シュラじゃなくてシェラだ。バカ。」

アルは素早く間違いを指摘する。
だが、それに怯まずにライは質問を続けてくる。

「んなこたぁどうでもいいから、あとどれ位で着く?」

「まあ大体あと半日ってとこだな。」

そう言うとアルはまた馬車の手綱を握る。
シェラの里を目指し、ティパの村のキャラバン一行はヴェオ・ル高地をゆっくり進んでいた。

―ヴェオ・ル高地。
ティパ半島から遥か北に位置する高地。
そこにはユーク達の隠れ里、シェラの里や大乱が終わった証とも言えるヴェオ・ル水門がある。
今、シェラの里と言えば魔法、学問、研究の聖地とも言える場所だ。
知識を求める者になら拒む事無く向かい入れてくれる。
ただ、村長自らが門番をしているのは戦乱の頃の名残かも知れない。
シェラの里の近くには巨大なヴェオ・ル水門がある。
種族間の大乱が終わり世界が平和に向かい始めた頃、勇敢なリルティの民が魔物を退け街道の安全を約束し、智の民ユークは魔法の力で水門を造り上げた。
水門はシェラの湖から水を汲み上げジェゴン川に注ぎ、勤勉なクラヴァットの民が長年かけて大農耕地帯へと生まれ変わらせたファム大平原を潤し、世界に安定した食料を供給するまでになった。
この水門は言わば、それぞれの種族が長所を活かし合い平和を創り上げた証だ。
水門の奥には平和の思い出に応えるようにしてミルラの木が生えている。

ティパの村のキャラバンもこのミルラの木を目指し、水門に向かっている。

「でもよぉ、アル。何で今回はこんな遠いところ選んだんだ?
もっと近くのカトゥリゲス鉱山とかでも良かったんじゃないか?」

黙って歩くことに飽きたのか、ライはアルに話しかける。

「最初はそのつもりだったさ。
けどな、村長命令ってやつだ。」

そう言ってアルはポケットから綺麗に折りたたまれた手紙を取り出し、ライに渡す。
ライが急いで手紙広げる。

『エディアールよ、今年のクリスタルキャラバンの旅は順調か?
こちらは変わり無い。安心して旅を続けるが良い。
ところで一つ頼みたいのだが、シェラの里に使いに行ってはくれないか?
近頃ジェゴン川の水量が減っているのだが、それの原因を確かめて欲しいのだ。
シェラの証をこの手紙と一緒に入れておく。これがあれば里に入れてくれる筈だ。
では、旅の安全を心から祈る。
ローラン』

ライが手紙を持っている部分に皺が寄る。
気が立っているのが見て分かる。

「じゃあ、何か?
村長の気まぐれで俺達はこんな寒いとこに居んのか!?」

「五月蝿い。寒いのはお前がそんな格好してるからだ。」

ライの主張にアルはそっけなく返答する。
見ればライの格好はセルキーの民族衣装。他の民族に比べ体を露出している部分が多い。寒いのは当然である。

「そうですよ、ライ先輩。
ところでセルキーには厚着をするという文化が無いのですか?」

横槍を入れるように二人の会話に小さなリルティが割り込んでくる。
名前はノール=ベイン、今年からキャラバンに参加した新人だ。
親は村でも有名な鍛冶職人で、いつも家計が火の車のライの一家とは対照的に結構裕福な暮らしをしている。
ライはそれを気に食わないのかノールと度々言い争ったりする。

「ああ、生憎だが俺んちには、んなの買う金も無ぇよ。
お前みたいな甘やかされたお坊ちゃんと違ってな!!」

一頻り言いたいことを吐き出した後、ライが乱暴に馬車に座る。
腹は立つが相手はキャラバンの後輩、しかも年下だ。
手を出すわけにはいかない。
ライは腹立ち紛れに馬車を殴りつける。

「ライ先輩、やめて下さい。この馬車はキャラバンに伝わる大切なものです。
そんなことしたら罰が当たりますよ?」

不意に馬車の中から声が聞こえた。
声の主はユークの少女、リーゼリアだった。
彼女も今年からキャラバンに参加した一人である。
一見物静かだが思慮深く、このキャラバンに参加したのも世界を自分の目で見て回りたいという本人の強い意志による志願かららしいが、それはセルキーのライから見ればかなり変わっているようにも見えた。
口調を荒げることは決してなく、その穏やかな口調で言われれば腹が立っているときでも大抵落ち着いて話を聞く気になる。

「そうだな、スマン。俺が悪かった。」

落ち着いたライはリーゼリアに謝っておく。
こうして見るとどちらが先輩なのかが分からない。
ライの方が3つも年上なのに、だ。
と、ライはリーゼリアが持っている本に気付く。

「何だ、この本?随分古いけど…。」

ライが本に触れようとすると、それを拒むようにリーゼリアの手が動く。

「あ、これは幼い頃母に貰った絵本なんです。
持っていると母がすぐ側にいる気がして…。」

それを聞いてライはハッとする。
いくら自分からこのキャラバンに志願してもまだ彼女は12歳なのだ。
親が居なくて寂しい気持ちは分からなくも無い。

「ま、気持ち分かるぜ。
とりあえず水門でミルラの雫採ったら村に帰れるから、それまで我慢しな。」

ライが先輩面をしてリーゼリアに言い聞かし、外に飛び出す。

「アル、ティティ。早くシェラの里行かねぇ?」

飛び出してきたライが二人に言う。
その言葉の元はキャラバンの先輩としての格好をつけたいため。
少なくともリーゼリアの気持ちが自分には分かる、そういう気持ちからだった。

「ライ、急にどうしたの?」

「どうでもいいだろ。急ぎたいんだ、今は。」

馬車はシェラの里へ向かってゆっくりと進む。
今年の新しいキャラバンと言う村の未来を乗せて。
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